インドのハンドブロックプリント(手捺染)のファブリックをご存知ですか?
柄を木版に彫り、その木版を使って人の手で1つ1つプリントされる、古代から受け継がたインドの伝統的なテキスタイルの1つです。機械によって安価で大量に寸分の違いもなく、しかしフラットにプリントされる生地にはない、優しいリズムを感じる趣のある美しいファブリックです。
記録によると、木版を使って布地にプリントしていく手法は紀元前から中国やインドで見られ、特にインドにおいては、マハラジャの君臨した時代に、彼らの美と贅沢への追求の保護を受けて12世紀頃に大いに発展し、ラジャスタン州、グジャラート州で盛んになりました。その繊細な色柄の美しい布地に、ヨーロッパの人々は魅了され、人気の貿易の品として一世を風靡しました。マハラジャの中には門外不出の柄を指定したり、その価値はとても高く評価されました。
ブロックプリントは、その後インド全土に広がりましたが、やはりラジャスターン州の州都であるジャイプールが最も有名です。現在もジャイプールの周辺の村々で、職人たちが集落を成して作り続けています。その工程は今も昔と変わらず、全て手仕事で行われています。
ブロック(木片)に柄を彫り、そのブロックを指定の色に調合したピグメントで浸したスタンプ台(布地を重ねてたたみ、そこに染料を浸します)につけ、何メートルにも及ぶ台に固定した生地に、リズミカルにプリントしていきます。
木版に使われる木材は、繰り返し使っては洗い、使っては洗うので、伸縮しない堅い木であることが重要で、チーク材が多く使われています。
季節やその日その日だけでなく、1日の間でも湿度、気温によって色の生地へののり方は違ってくるため、職人たちはその都度色の調合を変え、押す力も加減します。何年も修行し感覚を習得します。また、1枚の生地をプリントするのに数百回から数千回もブロックを押し続ける重労働です。特に酷暑の時期は大変です。1つの柄に数色使われていれば、各色毎に木版がつくられ、1色プリントする毎に色を定着させ、洗い、乾かし、その上から次の色をずれないように押します。その繰り返しをして1枚の美しい生地が出来上がっていきます。気の遠くなるような集中力と忍耐を要し、どの職人も真剣な眼差しです。もちろん機械ではないので、少しかすれたり、濃淡がでたりしますが、それが何とも人間らしいぬくもりと愛おしさであり、1枚1枚が唯一無二の生地であるという魅力があります。たくさんの生地の中から自分の手元に来てくれた「その」生地に、特別な愛着を感じます。
職人たちは、その都度その都度、きちんとメモをとって色の調整をしています。
古典的な植物柄だけでなく、最近では、この貴重な伝統文化を生かして継承していきたいと考える人々から、様々な新しいアイデア柄の発注もあり、幾何学模様はもちろん、こんな可愛らしいビーチサンダルや自転車などのユニーク柄も作られています。
今回私たちも、オリジナル柄でブロックを作ってもらい、カディ生地にプリントしてもらいました。1つのブロックでその都度違うファブリックに、違う色でプリントしてもらうことができます。小ロットから様々に組み合わせができるところが魅力です。限りない広がりと楽しさがあります。
(3H – Head, Heart & Hands)オリジナル柄)